デイビットリーロス

東離三期十二話。ビョンホンの突然のお弁当で自分でも驚くほどに落ち込んでいる。異飄渺ロス。なんだかんだで、明夫さんとビョンホンのでこぼこしたコンビ、好きだったんだな。

あの退場のさせられ方は本当に非道。一期から退場していったキャラは数あれど、三期のビョンホンが個人的に一番せつない終わり方だと思っている。あれはない、あれはちょっとないよ、もっと生きてて欲しかったよ、とご本家視聴後のようにぐるぐると考え続けてしまう。霹靂さんの物語は好きだけれども、もしかして自分は霹靂さんの物語を楽しむのに向いていないんだろうか。少なくとも詐術という技術の利用に対しては、賢く頭脳明晰でエクセレントと思うよりも、卑怯で汚いイメージを抱いてしまう人間なので。見た目がどれほど綺麗でも、なんだか汚らしいなぁと。

たとえば何か、二期の狂狷さんみたいに、異飄渺が無辜の民の殺戮を命じているとか、理不尽な殺人を繰り返しているとか、そういった因果応報がはっきりとわかりやすく描写されていれば。仕方ないなと納得できたんだけれども。神蝗盟の法師で、主人公達と敵対する組織の一員で、というだけでは、存在を蔑ろにされる理由付けが弱過ぎるのだと思う。そこまでしなくたっていいじゃない、て。敵対といっても、別に圧倒的に立ちふさがることもなく、主役側を苦境に陥れることもなく。厄介者を次々と連れてくる軍破殿のフォローを頑張りながら、「これからなにかひと騒動起こしそう」な段階に見えていたのに。やっと見せ場が増えたり台詞が増えたりしたなと思った時には、本人は既に雲の上だったという。最後にひと花咲かすこともできず、蕾のままで枯れてしまったこの人の、今までの人生ってなんだったんだろう。

これだったらまだ登場時間は短くとも、妹を守り抜いた丹衡兄さまや、宗主様への報告義務を果たした殘凶さんの方が、最後までどう生きたか、を問われた時に「最後まで誇りを持って生きた」と答えが出せそうな気がする。前者は護印師としての。後者は玄鬼宗としての。

やっぱりどう考えても、面白い面白くないは別として、人の尊厳を貶めるのはよくない。それが物語だというのであれば、そんな物語が流行しない今のこの国は、捨てたものではないなと思う。東離、好きだけれども。こんなのが流行するようでは駄目なんだと今更ながらに気づく。

ところで十二話まで来たというのに、一期と二期ではあったピカレスクもののお約束のざまぁがない。刑亥姐さんの足を揉んでたのは捲ちゃんだったので、当人は痛くも痒くもないだろうし。三期は地団駄もお休みなのか。

ひとつ、未だにわからないのが、やっぱり捲ちゃん（中身はビョンホン）が刺されたときに現れた刺された凜さんのシルエット。ミスリードを誘う為に入れたのか、それとも他に意味があるのか。

異飄渺にはまだ生きて、本当の異飄渺の顔を見せて欲しいと願っているので、あれが全てを知った猊下の怒りに触れ、ビョンホンが刺される寸前の過去に逢魔漏とか重力技とかで飛ばされた凜さんが代わりに刺され、過去改変が起こって異飄渺は生き残る、だったらいいなと。

そしてそれが今季のざまぁだったら、やっぱりお約束だよね、とすっきりするんだけれど。

凜さんは神仙のようなもの、剣術や幻術、医術なんかを高みまで極めすぎてしまって、世界から切り離されて、気がついたら死ねなくなってしまった系の不老不死者だったらと妄想しているので、刺されても死ななかったのが全員にバレてしまい、そしてそれこそが猊下が欲している神の能力であるので、逆に猊下に粘着ストーカーされるようになるのが残念な部分でも面白い。

冒頭で、「ではいずれ。」と言ってるのは、いずれなんか来ないことを知ってるし、いくら待っても約束なんか果たされないのを知っていての、掠風竊塵の大嘘。語り部といったらどこの世界でも長寿か不死であるのがお約束。異飄渺にはまだワンチャンあると信じて待とう。物語には、やっぱり希望が大事。