なけた
昨年の十月の中止から、六月にやります、と発表があって、ずっと楽しみにしていた布袋劇オンリーイベントが。残念ながら中止になってしまった。この時勢ゆえにやむを得ないとはいえ、ここまで頑張ってこられたオンリー主催者様やスタッフ様の気持ちと、本を出そうと原稿に一所懸命に取り組まれていたサークルの方々の努力を思うと、なんだか泣けてきてしかたがない。
遊びに行って、並んでる殤浪のご本をたくさん買いたかった。今だとコミケ中止の影響でBOOTHも受付混雑してるだろうから、通販も簡単にいかないだろうな。
一般参加したかった自分でさえめちゃくちゃがっかりしてるのだから、主催者様や各サークル主様のことを考えると、もうね、本当に。美味しいもの食べて、ゆっくりお風呂浸かって、たくさん寝て、どうか次のイベントまで心身健やかでいてください、と遠い空の下で祈るほかはない。
すぐに気持ちを切り替えるのは難しいけれど、楽しい事を考えていかなきゃな。サークル参加の方々よりははるかにダメージ少ないんだから。一般の自分が切り替えられないでどうする。
それでも当日はエアで何か企画されるとのことだったので、エアならオンライン活動のみの自分でもなにかしらできるから、我が家の殤さんと浪浪の画像や小話でも、ここに載せようかと画策している。オンリーに合わせてひとり殤浪まつりでもやろうかな。
そういえば、pixivで大好きな殤浪作家さんの小話があって。殤浪が丹家へお邪魔してもてなされてて、海老を出されて食べてる話なんですが、そのシーンがどうしても忘れられなくて、海老を買ったのですよ。
浪さんに海老を食べさせてあげる殤さんと、殤さんから海老をもらって食べてる浪さんが、なんというか微笑ましいシーンなんだけど、想像したらものすごい官能的だったので。海老が売られてるのをみたら、海老だ!買わなくちゃ! という猛烈な使命感にかられて買ってしまった。
公式で、浪さんが好きな食べ物というのは発表されてるわけじゃないので、(魚食べてるイラストはあったけど)うちの浪浪さんの 妄想上の好物はおかげさまで、すっかり海老で定着しています。
◇◇◇◇◇
「中止、か。俺と不患の物語の新作が、たくさん読めるのではないかと楽しみにしていた。残念だが致し方あるまい。」
「がっかりした時には、うまいもん食って、うまい酒でも飲むのが一番だぜ。お前の好物を用意したから、元気だしてくれ。」
「これ……、羅氏蝦? 不患! 」
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◇◇◇◇◇
表情こそ大きく変わらないものの、付き合いの長い殤には、浪が嬉しそうにしているのがわかる。好物なのか、以前、饗宴をうけた丹家でも美味そうに食べていた。
「今、殻をむいてやるからな。待ってろよ。」
「そんな、自分でむける。」
「ふたりでむいたら、倍はやく味わえるだろうが。」
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「倍、って。」
それは、殤が自分で殻をむいた分を、自分の口でなく浪の口に次々と運ぶからである。黒髪の男は面倒見の良い気性だった。食事で浪が手間取っていると、骨付きの鳥から骨を外して身だけにして口に放り込んできたり、貝殻についた身を剥がして箸で差し出してきたりする。
「いいだろ。これが楽しいんだから。」
「むぐ、」
さっそく一つ目の海老の殻をむいて、浪の口元へと運ぶ。緋色のぽってりした唇の間を押し分けて、赤と白の縞の海老が奥へ消えていくのを、殤は目を細めて見送った。もぐもぐと咀嚼し、細い喉が動く。赤い舌が、ぺろりと濡れた唇の端を舐める。
「ん……、おいし。」
(やべぇ。エロい。)
雛に餌をやる親鳥のような、あたたかな気持ちとは程遠い、ほの暗い欲が沸き出してくる。なんどやってもたまらない。殤はにこりとしながら、ふたつ、みっつと苦にもせず、海老の殻をむき続けるのだった。
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うちには聆牙ちゃんはいないんだけど、もしいたら間違いなく、殤さんは容赦なくツッコまれてると思う。それ、浪の為じゃなくて自分の為だろう、と。