殤浪@サンファンドットコム

【Attention!】こちらはBL要素・18禁の内容を含みます。どうぞご注意下さい。Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 のキャラクターのカップリング推しの管理人、律による、腐向け二次創作記事中心のブログとなってます。

とある望月の補完その四

殤としては、先ほどの釣り人に見られたように、誰に見物されようが構わないのだが。それで浪が集中できないならば可哀相だと思う情はある。

静止を叫ぶわりに、その敏感な体内はいつも以上に殤の竿に反応を返し、引き込もうとうねっているのだとしても。慣れない場所で緊張するかと案じたが、まったくの杞憂だった。甘露の沸き出す壺のようなそこを突き続ければ、浪の潤んだ緑の瞳はとろりとして、いつも通りに理性を失いつつある。

「まあでも、確かに、誰かにお前の今の顔を見せるのは業腹か。」

「わかって、くれたか。」

その優しい言葉にほっとして、浪の体のこわばりがとけた。といてしまったのがまずかった。両足を支えられているとはいえ、いっそうの重みが繋がった一点にかかる。

「ひっ……!! 」

ぐじゅりと根本まで入り込んだ巨根に奥まった壁を削られ、浪の腰の奥で耐えきれないほどの快感が爆ぜた。目の前に白い火花が飛んで、一瞬何も見えなくなる。腹部がぎゅうと痙攣するのがわかった。下腹に開いた穴からあたたかな潮が流れ出す。

「ぐっ、」

強く内側を引き絞られて、殤もまた低く呻きながら溜めていた精を奥へ放った。

 

「はあ、はっ、は、」

急激に達した体ががくがくと震え、息が整わない。それでもこれで、水中で立って交わるという奇異な体験が終わったのだ、と浪が涙で滲む目をこらして、殤の鎖骨に汗ばんだ額をぐったりと寄せたときだった。

ざりりと川底の砂利を踏んで、殤が歩き始めた。……浪の両足を離さず、繋がったままで。引き抜かれないそれは未だに恐ろしいまでの硬度を保っている。

「歩く、なっ。奥、おく、当たって……、」
「びくびくしてんなぁ。ずっと絞られて気持ちいいぜ。」
「いやっ、、、あるかない、で……、あぅっ、おねが、止まって……!」

水から上がり、石の多い川原をゆさゆさと歩くたび、繋がった場所からいやらしい水音が洩れた。逞しい腕で支えられた体が上下し、自重で咥え込まされた殤の棒に、腹の有り得ないほど深い場所を抉られている感覚が灼ける様で、浪の視界は日の光が強まり、辺りを埋め尽くす葉緑の景色が真っ白に変わっていく。途切れ途切れに悲鳴をあげながら悶絶し、それでも殤の凹凸を踏み越える歩みは止まらない。

気を失う一歩手前で即席の天幕に連れ込まれた浪は、身を隠すことができ、開脚のまま前から揺すぶられていた両足を閉じられる気配に、霞んだ思考の内で安堵した。
が、安心するのは早計だった。地面に降ろされ足は半分閉じられたが、殤の棒を奥深くに突きこまれたまま、あろうことか座っている殤の上に対面で腰を下ろす形になった。無理やりこじ開けられていた箇所がさらに口を開き、先端がなおもずるりと滑り込むのを、もはや押し止める声も出なかった。
かはり、かはりと咳き込むような音で呼吸し、全身を引きつらせて痙攣する。腹から太もも、つま先まで小刻みに震えるのを、労わるような微笑みを浮かべた殤の手が撫でさする。それすらも腹の奥の熱塊の巻き起こす歓びにつながって、浪に残された独特の穴から、透明な愛液が噴水のように噴き出してふたりの胸をさらにずぶ濡れにした。極まった浪の両の瞳からは涙がこぼれ落ちる。
「気持ちいいか、巫謠? 」
「ぅあ、っぁあ……、」
ああ、何か殤に聞かれている、というのはかろうじて解るのに、内容も己の絞り出した答えもわからない。真っ白な世界で絶え間なく生まれ続ける快楽の波に上下左右に投げ出されて、浪の意識は散り散りになっていった。


「巫謠、寝ちゃっているの? 珍しいわね。人が帰ってきたのに目覚めないなんて。」
具合でも悪いのかしら、と遠くで女の声がし、言われてみれば昼から体調が悪そうだった、と男が続けた。
「体調が悪そうだったのに川へ水遊びに連れ出したの? いけないお兄様ね。」
そいつは面目ねぇ、と謝る声。
「まーまー、浪のヤツも楽しんで帰ってきたんだろうからよ。川原で遊び疲れて寝ちまったのさ。な、旦那。」
「おお、うん。」
一番聞きなれた琵琶の声は、どこか男を揶揄うような響きをはらんでいる。
(俺は……、)
ゆっくりと浮上する意識。川に行ったのは夢じゃないらしい。髪を洗って水浴びで体温を下げて、それから。それか、ら……。
思うように働かない頭と、からからになった喉と、酷く怠い下半身と。最後に見たのは、殤の裸の、濡れた胸筋と、吹き上がって飛び散る、透明な飛沫。
「……へゃぁっ、」
喉の奥から楽師にあるまじき変な声が出た。ちりちりと首回りが夜着に触れて痛い。目を開ければ暗がりに見慣れた天井が見えた。隠れ住む屋敷で、自分と殤とが使っている狭い寝室である。廊下を挟んで隣の居間からは、睦天命と殤不患、そして愛用の琵琶の話し声がしていた。
「お、浪のヤツ、起きたみたいだぜ、旦那。」
「様子を見てくる。」
声が聞こえたのか聆牙が言い、殤が椅子を引いて立ち上がる気配がした。

「起きたか。体調はどうだ? 」

正直、腹の奥が綿を詰められたようにふわふわとして、起き上がれる気がしなかった。喉もひどく乾いている。だが、明かりを手に心配そうに入ってきた殤にそれを直接ぶつけるのも憚られて、絞り出すように言って顔を背けた。

「本当に、お前は、信じられぬ真似を……っ」

元は川の水で涼んで、熱で鈍った頭を冷やして、薄衣に着替えさせようとする睦姐姐にやんわりと断りをいれる術を考えるために行ったのだ。それがどうしてこうなった。

「まあまあ。今日は寝ちまえ。明日になればわかる。」

それより、と殤は寝台のそばの水差しをとり、湯呑に注いで浪に勧める。

「終わった後は水、飲んどけよ。あれだけ出るんだ。毎度血流がおかしくならないかと心配にもなる。」

出る。何を。汗か、……それとも。思い当たったそれに、一気に恥ずかしさが増して、浪は体にかかっていた布を頭まで引き上げた。男同士だからか、殤の物言いにはいささかの遠慮もない。

「一応終わった後にも、口移しで飲ませてはいるんだが。量が量だけに気になってな。」

そうなのか、と布の内側で浪は目を瞠る。人の何倍も感じやすい五感を持つ浪は、閨の後はほぼ、快楽の大きさに神経が耐えきれず気を失ってしまう。殤が体を清め、衣服を着せて寝かしつけてくれているのは知っていたが、水分補給までしているのは初めて知った。

良く気のつく、優しい男だ。流石、天下に名を馳せるだけのことはある。

突然水中で無体を働かれたのも忘れて、他者への情深さを讃える思考が働き出すほどに、浪は己の兄弟分に心酔し、信頼を置いていた。聆牙がそばにいればまた、容赦なくつっこまれていただろうが。

殤不患に言いたいことはいろいろある。さりとて今は。

「水を。」

渇きに耐えかねて、掛布から両目だけそろそろと出してねだれば。湯呑みから一口含んだ殤が顔を寄せてきた。親鳥が雛に餌をやるように唇が重ねられる。流し込まれた水はどこか甘かった。あやすように舌が絡められる。今日の浪は、どこもかしこも濡らされていた。

「たくさん飲んで、眠っちまえ。明日になれば解決する。」

「……ん。」

 

 

翌朝のことだった。

「浪浪。具合はもういいの? 」

「心配をかけてすまなかった。」

「ううん、いいのよ、それよりね、昨日行った市であなたにぴったりの……、」

台所で朝食の支度をしながら、振り向きざまに言いかけた睦天命の言葉がそこで途切れた。

曲者揃いの啖劍太歳一行で参謀を張る女傑である。また、浪巫謠の理解ある優しい姉でありたいという希望もある。顔色ひとつ変えず、朝の爽やかさを保ったままでにっこりと笑いかけた。

「着物を見つけたのだけれど、浪浪には少し薄くて襟元が浅いかしら。」

「浪のヤツ、昨日庭の椅子でうたた寝してて、虫の大群に刺されちまったらしいぜ。姐御も裏庭に出るときゃ気をつけなよー。」

喧しい声でしれっと言ってのけたのは、浪の背から食卓の椅子に移された琵琶であった。いつもの赤い衣装の立ち衿でも隠せない部分に、おびただしい赤い痕が残されているのを見た聆牙は、魔剣を収集する祟り神の真骨頂を見せつけられて、ぎりぎりと歯噛みしたのである。なるほどそうきたか、と。

「あら、困ったわ。たちの悪い虫もいたものね。」

「ホントになぁ。」

主想いの魔楽器は、女傑の笑みに負けないくらい爽やかに笑ってみせた。

肝心の浪は、座ったものの無言で壁を見つめ、姉に嘘を重ねる痛みと、諸々発生した羞恥にふるふると震えながら耐えていた。

「薄い絹衣は、虫刺されが治ったら着ればいいわ。ねえ不患。それまでに庭の害虫退治をお願いね。」

「おう、任せとけ。」

食前の茶を啜りながら、琵琶に負けず劣らず、しれっと殤が答える。彼の長年の同志たる女侠は想像していた通り、有難いほど聡かった。

 

その夏、隠れ家の裏庭から虫が駆逐されることはなかったという。