白い鶯
西幽玹歌で、お前はわたしの鶯だ、と宣言された浪さんですが。どうもウグイスといえばウグイス色、くすんだ灰のような緑がかった茶色のような、見た目じじくさく、ぱっとしないイメージの鳥であり。オレンジ髪で真っ白な服を着ている浪さんの容姿と比較すると、あだ名としてはあんまりマッチしないというか。
しかも、ウィキさんによると、鶯の漢字がさす鳥は日本語と中国語では異なるらしい。日本の鶯はぱっとしない色のスズメ科の子だが、中国の鶯はカラス上科のコウライウグイスで、こちらは特撮戦隊もののイエローなみに真っ黄色な鳥なんである。ということは、お前はわたしの鶯だ、といった嘲風さんの脳裏では、(あるいは台湾のファンの間では、)けばけばしい黄色の鳥がぱたぱたしていたことになり、ますます浪さんの印象からは遠ざかってしまう。
でも調べたら、白い鶯って日本の伝承の中にいるらしい。時は平安時代末期、前九年の役で出陣した源為義の軍の旗印に白い鶯が止まり、勢いづいて勝利をおさめたという。吉兆となる生き物が現れて勝利するのはよくある話だけれど、スズメ科であるちっさい鶯がホーホケキョと鳴いて荒くれ武士どもを扇動するのは、ちょっと癒し系な伝説。
まあ、白い鶯がまったくいないわけではない、というのがわかって良かったかな。というわけで我が家にいる、白い鶯(心の眼で無理やりみている)の妄想。
一羽の白い鶯は、狭い籠の中。
褒めそやす花に囲まれて。
挑んでくる蝶を退けて。
花は言う。わたしの花園に永遠においで。
外の世界なんて知らなくていい。
閉められた籠に、鍵はない。
体が触れれば籠の戸は開く。風が吹けば戸は開く。
白い鶯は気づかない。
ある日一陣の風が吹いた。
風は鳥籠の戸を開けていった。
外に出るかはお前次第。
外に出ないもお前次第。
外へ出た鶯は、疫病神の旗印の先へ降り立った。
あなたに勝利を約束しましょう。
声が涸れるまで歌いましょう。
返り血に濡れ赤く染まろうとも。
魔性の剣の歌を捧げよう。