殤浪@サンファンドットコム

【Attention!】こちらはBL要素・18禁の内容を含みます。どうぞご注意下さい。Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 のキャラクターのカップリング推しの管理人、律による、腐向け二次創作記事中心のブログとなってます。

二羽の小鳥

今週も! もう終わり! 明日はなんと五話! 早すぎるったらない。GWのゆったりしたお休み感を得るにはもうしばらくかかりそう。

今週も浪さんの身が心配で仕方がないまま過ごしてきたけれど。この子はあちこち怪我、し過ぎ。二期から傷だらけなんじゃなかろうか。

傷を負うことに無頓着なのは、幼少期から虐待すれすれの愛の鞭で痛みに慣らされているからなのかと想像すると、とても切ない。たぶん、「無理させたな。」って殤さんの二期の言葉も、無言だったけど胸の内では「無理なんかしてない。痛いのも苦しいのも平気。慣れてる。」って答えてたんじゃないかと。

今回、三期で刺されて怪我した後も、重傷の自分のことより戦っている殤さんのことばっかり心配していて。健気すぎでしょ。そりゃ、悪手だろうがなんだろうが、殤さんは早期決着つける為なら回転しまくって旧友にも突っ込んでくよね。愛しい嫁さんの危機に、悠長にしてらんないですもの。 

 

怪我といえば、殤浪沼の底に生息している民の眼から西幽玹歌を見たときに。皇女嘲風と白浪さんは百合CPにしか見えなかった。

嘲風、竜が生んだ九匹の子、竜生九子の一匹で、鳥の化身。姿は鳳凰に似、高き場所から遠くを眺めるを好む。

竜生九子といえばリンカネでお馴染み。(最近はニーアリィンカネも出たので紛らわしい。)嘲風の名は出てこないが遠きをみる子や他の兄弟はでてくる。人に業を与える存在。

鳥の化身である嘲風もまた、宮中という出られぬ籠の鳥にして、籠の主であり。大嘗の託宣により姿を見せぬ父に代わり、幼くして政務をとる身となった少女が、何をきっかけに歪み始めたのかは未だ語られないけれど。

 

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籠の主であり、籠の鳥でもある皇女は、ある日鳳凰の雛と出会う。才能溢れる鳳凰の雛は、その純粋さゆえに世の悪意に傷つき疲れ果てていた。

鳳雛は箱入りで育ち、ひどく世間知らずでもあった。政の為に名だたる博士に学を叩きこまれ、修めざるを得なかった嘲風と比べれば、足元の覚束ないひよこのようなものである。けれどそのひよこは、こと楽と剣術に関しては、余人を持って代えがたい才の持ち主だった。なにより、燃える火の色をした髪に翡翠色の珍しい双眸の美しさ。シミひとつない肌の清らかさ。天女もかくやの美貌と、聞くものを虜にする金衣公子の歌声と。憂いに沈む昏いまなざしに、纏う衣は死出の道の白。

花は美しくも、手折れば容易く散る。戦いに命を臨みて、手折られかけても決して散らぬしなやかな芙蓉のごとき羽持つ鳥。美しくも壊れぬ花と、籠主は心から欲しいと望んだ。

籠の中で過ごす二羽は姉妹のように互いの髪をついばむ。何でも知っていて、籠の主でもある嘲風が姉鳥、何も知らぬが今のところ籠の宿り木を生のよすがにする白浪が妹鳥である。姉は気まぐれに、妹の美しさと素晴らしさをよりいっそう味わう為に闘いの場を設ける。国一番の称号を授けた妹は、顔を曇らせながらも黙って従う。純粋ゆえに臆病で、憂き世に立ち混じって羽ばたけるか、まだ覚束ない雛であるがゆえに。

二羽の小鳥は互いの羽を毛繕いし、籠の内から遠きを見て暮らす。

 

厳重な籠のはずだった。その籠を、鵲が錠を開け、鷹が襲う。哀れ鳳雛は攫われ、籠には一羽の姉だけが取り残された。姉は妹を取り戻すために国さえ傾ける。

 

なんと嬉しや、籠に戻った妹鳥は、鼓動も息遣いもかつて寄り添い睦言を紡いだ時のまま。

なんと悲しや、籠に戻った妹鳥の色は、破瓜の赤。鷹の猛りを知り、二度とは戻らぬ純潔の白。

 

「番など許さぬ。そなたは永遠にこの嘲風の籠の鶯ぞ。」

妹鳥は、戻って来た籠の内から再び遠きを見る。外から見れば、多くの血によって鉄錆びた赤い籠だったと今は知る。姉と己の罪深さを封じ込めたかのような、血塗られた鳥籠。

これ以上。誰の血も流させはせん。己の、それ以外には。

番い、契った鷹の羽の温もりを思い返しながら、妹鳥は己の風切り羽を咥え、静かに姉に差し出した。

 

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