あの鳥達のように 2
ペンギンの写真を数枚撮った後、ふたりは順路を逆に歩いて入り口まで戻った。それから太歳は写真撮影可と書かれている幾つかの水槽の前で三脚を立て、水の生き物の写真をレンズにおさめていた。白浪は邪魔をしないようにやや離れたところで、太歳が被写体に選んだ生物と、それを撮っている真剣な太歳の横顔をそっと眺めていた。
普段、仕事場で様々な衣装を着こなし、撮られる側に回っている太歳も色気があるが、こうして撮る側に回っても同様に画になる。目を奪われてじっと見つめていると、視線を感じたのかふっと太歳が顔を上げて、からかうように笑った。
「俺じゃなくて熱帯魚、もっと見とかなくていいのか? 」
白浪は首を振った。
「太歳を見てるほうがいい。」
そういえばあの時も一緒にいたのだと、朧気に残る記憶がよみがえる。大好きな隣家の兄弟に連れて来てもらった水族館で、白浪は十分近くも熱帯魚の水槽の前を離れなかったというが、太歳もまた、幼い白浪の手を握ったままそばにいたのだった。
しばらくして場所を変えようと三脚を担いだ太歳の、空いた左手に、白浪は自分の右手を重ね合わせた。
「お、やっと繋ぐ気になったか?」
「……何を今さら。」
本当に、今さらだった。ずっと昔から、太歳の手は自分に向けて差し出されていたというのに。