晴天を祈る
東離三期はもともと昨年十月放映予定だったのもあってか、今回は放映終了後から一か月も経過しないうちに円盤がハイスピード発売されることになっていて、六月二十六日の最終回から二週間強の七月十四日には第一巻がお目見え。さすがにひと月たらずでオーコメやインタビューがまとめられるはずもなく、時期的には今から半年から下手をすると一年前ほどのコメントになるんだろうな、と推測される。撮影終了したの、去年の三月だし。
制作費回収の要はやはり円盤なので、早めにきちんと収益が上がって四期に繋がればいいと思うけれど、ワクチン接種が始まったばかりの日本と台湾、四期撮影開始までにはまた長い道のりがかかりそう。
今週の末には関西布袋劇オンリーイベントが大阪にて開催。殤浪サークル様も参加されるし、なんとか行けないものかと考え続けてきたものの、ワクチンを接種できるのもまだまだ先の話っぽいし、やっぱり今の状況では難しいと断念することに。コロナ禍の中で、諦めたイベントの数を数えあげればきりがないのでやめるけど、またひとつ残念な記憶を積み重ねてしまった。
せめて、週末は晴れて気持ちの良い青空が大阪に広がりますようにと祈る。参加されるサークルの方々が安全に過ごせる天候でありますように。
七月十日は無生さんの誕生日だったけれど、妄想がうまく形になってくれなかったので、数日遅れておめでとう現パロ小話。
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「……なぜだ。」
中学の時に両親が揃って他界し、孤児となった無生は、篤志家の支援によって音大を卒業後、駆け出しのサックスプレーヤーとして海外に武者修行に出ていた。
本日七月十日は己の誕生日。高校時代に知り合った友人達には、後援者である「あしながおじさん」から花とプレゼントが届く日であると知られている。
今、無生の目の前に届けられた花束は、紛れもなく祝いの花だった。例年通り、青紫のカーネーション、ムーンダストのアレンジ花束であり、お決まりのカードもついている。透明なセロファンと白レース柄の不織布で飾られた三十本ほどの花々は、日本で貰っていたものとさほど変わらず、瑞々しく美しかった。
そう、変わらないのである。
無生のいるこの場所は、南米の南極寄りの先端に近い、小さな離島であるというのに。
冒頭の呟きを三回ほど繰り返し、けれど両腕は、配達された花束をしっかりと抱きしめた。今年も覚えていてくれた。忘れずに祝ってくれた。驚きを通り越して真っ白になった頭に、じわじわと湧いてきたのは喜びだった。
「……ありがとう、掠。」
『いつでも、あなたの幸せを願っています 』
「今頃はさぞ驚いているだろうね。」
煙草をくゆらすためにあるようなヘビースモーカーの指先は、今日はセスナの操縦桿を握っている。眼下の小島を見下ろし、その顔を想像し、胸のすく心地がした。
「それは、どこにいたとしても、どんな遠い場所でも、同じなのさ。」
今年は日本を留守にするので、何も送って来なくて良いと、あらかじめ無生のいた施設のトップ、鐵笛仙を通じてメッセージが伝えられていた。
「まあ、こんなところにいるのは想定外だったが。」
さすがに孤島にいる、という情報までは鐵笛仙の元には入らない。「あしながおじさんの掠」が独自に調べ上げた結果である。
「どこにいようと、私は君の幸せを願うよ。たとえ地の底であろうとも。」
墓の下に眠る男と、龍凰の酒杯で冥婚を交わした。穏やかな空に見守られていた魂と、やっと同じ巷間に生まれ出でたと思えば今度は親の仇である。
人によってはストーカーにさえ見える執着でも、相手の幸せを願うがゆえに相手に正体を明かさないと決めている彼には、まさしく遠くからの祈りそのものであった。