殤浪@サンファンドットコム

【Attention!】こちらはBL要素・18禁の内容を含みます。どうぞご注意下さい。Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 のキャラクターのカップリング推しの管理人、律による、腐向け二次創作記事中心のブログとなってます。

西幽玹歌、四回目

すごいのは、四回観ても全く飽きの来ない、西幽玹歌という映画。毎回新鮮。毎回新しい発見。あと十回くらい観なければ、見どころを全て押さえきれないんじゃないかというボリューム感。でも流石にもう観に行くチャンスがないので、早く円盤が欲しい。

 

観れば観ただけ、これってなんでこうなんだろう、っていう疑問が湧いてくるし、こうなんじゃないかって妄想がやってくる。人物の見方も変わってくる。

最初の印象から、四回目までで一番変化したのは、実は睦っちゃんだったりする。

初めは、浪さんを導くマドンナ、お姉さん的な女性、に見えてたんだけど、うーん。思いのほかこのひと、計算高いんじゃないんだろうか。いい意味で。

いろんなひとが作中で浪さんを利用している。それは、睦っちゃんも太歳さんも例外ではなくて。宮中に忍び込んで神誨魔械を盗み出す。その足掛かりとして宮中入りした浪さんの能力を利用した。

その後も南方へ連れて行き、あわよくば仲間に引き入れようとしたのは、睦っちゃんの、良かったら私たちと、っていうセリフからも見て取れる。太歳さんも、宮中へ帰すわけには行かない、と言っている。お前は危うい魔剣のようなものだから、嘲風の元に帰すわけにはいかない。だったら。だったら? 

浪さんでなくとも、何がいいたい? と聞き返したくもなる。

帰すわけにはいかないなら、どこかに監禁するのか。この世から消えろとでもいうのか。でも、そんな薄情な男じゃないはず。世の中の平和の為、魔剣が悪党の手元に渡って利用されないよう収集している義侠の太歳さんですよ。浪さんが魔剣なら、頼るあてがないなら、来ないかって誘いが自然な気がする。そして、浪さんの決めた身の振り方を聞いて、皮肉気な言い方をする太歳さんが、思惑が外れてちょっと不貞腐れているように見えた。

 

その後、引きこもり化した浪さんを、睦っちゃんはもう一度、人の世に引っ張り出す。それは、なぜ?

人に散々利用されて傷ついて、もう人と関わりたくないと言った人を。そっとしておいてあげなかったのは、どうしてだろう。

太歳さんは、あいつにとっては迷惑かも、と言っていた。それは太歳さんの思いやりであり、浪さんへの優しさ。異能を持って生まれ、利用されまくって傷ついた浪さんをそっとしてやりたい、っていうのは。去り行く寂し気な後ろ姿を思い出して、その心情を深く想いやってもいる。

でもそこで、睦っちゃんは、隠棲せずに人と共に生きる道があることを伝えに行くわけで。その流れで、浪さんは魔剣たる自分の柄を自分で握る、と決意する、いい話だなーとなる、んだと思ってたのだけど。

そこからの、「来てくれたのね!」 「いいのか?」っていうセリフですよ。これ、完全に期待してたんだろうね、睦っちゃんも、太歳さんも。浪さんがひとと一緒に生きるには、自分の魔の異能を利用しない、悪でないひとの元へ行くしかないわけで。でもそれって劇中では、このふたりのところしか、ないんですよ。

その後も食卓で、「自分達は西幽中から追われてる身」「一緒に来る義理はない」って、二人してまるで何回も浪さんの意志を試すようなことを畳みかけるんです。

 

しらじらしい。それ計算でやってるんですか。それとも無意識なんですか。

浪さんの返答はこうでした。

「なにをいまさら。」

ですよねぇ、ってなる。宮中へ忍び込む足掛かりとして利用して、南方まで連れてって自分達の正義を主張して、誘いをかけて、隠棲しようとしたのを引っ張り出して、捕吏と皇軍相手の魔剣目録攻防戦の戦力としていいように使っておいて。本当にね。

結局、店主も店の客も狂狷さんも嘲風さんも浪さんを必要としたけれど。作中で一番浪さんを必要とし、利用したのは睦っちゃんと太歳さんだった。それを、浪さん自身も理解した上で、自分の能力を生かせるところとして、ふたりについて行くことを決めた。

邪悪の徒と呼ばれる四面楚歌の太歳さんに、ひとりでも味方が欲しい。できれば自分達を裏切ることのないような、利害に左右されない純粋な味方を。戦力になればなお良し。他人を分析することに長けて、戦いのさなかも極めて冷静沈着で、パンフでも理知的と称されていた睦っちゃんのこと、そういう計算がなかったとは言い切れないんじゃないか。

なにをいまさら、ですが。

浪さんというひとが、睦っちゃんからの、殤さんへの贈り物、だったっていう妄想をして、なかなか萌えた。そんな四回目でした。