殤浪@サンファンドットコム

【Attention!】こちらはBL要素・18禁の内容を含みます。どうぞご注意下さい。Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 のキャラクターのカップリング推しの管理人、律による、腐向け二次創作記事中心のブログとなってます。

意外性のかたまり

発売から一週間近く待って、ようやくフェブリが届き、最新の、虚淵さんの西幽玹歌裏話が読めた。前のニュータイプの時とは違って、本当に制作裏話、という話が目白押しだったので、西幽玹歌のわりに主役の浪さんについてはあまり触れられていないのだった。

意外だったのは、西幽玹歌の脚本は当初霹靂のライターさんがプロット出しして書く案も上がってたと言う事。睦っちゃんと嘲風さんは、どなたかわからないけれどその人が考えたキャラで、でも虚淵さん的に浪さんの掘り下げが出来てなくて、プロット自体ダメだったらしく、かといって今さら詳細なプロット作って渡すの面倒で、だったらそれごと脚本書けばいいとなって、彼女達は名前だけそっくり借りて役割はガラッと変えた、という。

 

んー、正直文字にすれば短いが、けっこう、衝撃的な話だよなこれ、と思った。というのも、以前のインタビューで、ゆくゆくは自分が関わらなくてもサンファンというシリーズが続いていくように、という話で、生死一劍は他のひとが外伝小説を書いたんじゃなかったのだろうか。

それよりも。脚本を書いてるのは今のところ日本側でひとりきりだとして、台湾の監督さんや向こうのライターさんにシリーズ構成として、今までキャラ設定や基本となるプロットを渡してたりしてなかったっていうのが驚いた。だから向こうのライターさんも浪さんについては、二期で出た情報以上のことは何も知らずに書くしかなくて、そりゃ掘り下げよう、ドラマを作ろうったって無理でしょう、と。二次創作じゃないんだからさ。ちょっと、そこは霹靂のライターさんに心底同情した。確か生死一劍のときも外伝のライターさんは、無生さんは劍技會で恥をかかされて恨んでる、くらいの情報しかない中で、まさしく二次創作で、あれだけのドラマを練り上げて作られたんだった。考えたら本当にすごいよ。丸投げと一緒だもの。

丸投げされて、面白ければ使われるし、そうでなければ名前だけ抜き取ってプロットからキャラ改変されて使われるのか。制作の現場ではそういうのはよくあることにせよ、心情的には、向こうのライターさんもよく我慢したよな、と思う。

なので、もしそちらの案が通っていたら、睦っちゃんと嘲風さんは今とは全く別の関わり方を浪さんとしていたかもしれないし、それこそ皇女姉妹で、浪さんを巡って恋路を争ってたかもしれないのか。それはそれで見てみたかったが。結局最後は殤さんにばちりとおちて持って行かれるなら、過程がどうあれ変わらないのだし。

それはそれで、月を見ながら浪さんのことずっと考える殤さんも、狂狷さんの行くな!っていう叫びも、あのメタモルフォーゼも生まれていないのだと考えると、寂しいけれど。機会があれば、生まれなかったもうひとつの西幽玹歌、の設定というのも読んでみたいな。

でも、かっちり決めてないという話は前々から出ていたが、キャラ設定に関して霹靂さんの側と今まで出た以上の他はなんにも共有してないっていうのは、もし縁起でもないけれども虚淵さんになにかあったら、長いプロジェクトにしたいとはいっても、即座にそこで終わる、ということか。気になる殤さんの過去も凜さんが掠風竊塵へ至った道も、今のところ脚本家の頭の中にしかないっていう。そこは複数のライターさんによる脚本会議のある霹靂さんのシリーズとは違って、ひとりの漫画家の描く先の見えない漫画を読んでいるようだ。原作の無い、完全にオリジナルファンタジーの。

これ、もしかしなくとも、四期があったとして四期も他の外伝も、誰もホンを書けないんじゃないかな。インタビューを読みながらそんなことを思った。ぽっと出の浪さんですらひとの頭に任せられなかったのに、三年書いた他のふたりの生い立ち、根幹に関わる物語を、それこそ短い説明でひとに書かせられるわけがないよな。そこは、自分がいなくとも成り立つシリーズにしたい、という当初の目的と大きく矛盾してくる。だって今回ボツになったの、そこらの、布袋劇をあまり知らないライターさんじゃないんだよ。霹靂の、ご本家のライターさんなのに。絶対霹靂布袋劇らしい、ひとが沢山亡くなるけど、壮大な時代劇っぽい話に仕上げてくるに決まってるじゃないか。

でもそれでは駄目だったという。だったら、この先誰にもサンファンは書けない。そういうのはもう、プロジェクトとは呼ばないよ。虚淵さんの、人生の一部、ライフワークっていうんだ。

あともう一つ意外だったのが、睦っちゃんの胸の大きさについては他のひとの提案だったらしい。いや、不自然なほど大きいなとは思ってたけど。なんか、刑亥や蠍っちゃんみたく魔性の女ならば胸が大きくてもいいけれど、睦っちゃんはそんな役回りでもないし、とおっしゃってたが。それこそが、女性キャラに対するステレオタイプな偏見なんじゃないの、と思わなくもなかった。というか蠍っちゃんはお世辞にも魔性でも胸が豊かでもなかったぞ。あの子、ぼろ小屋に潜んで真面目に職務を果たそうと頑張ってたじゃないか。

知的で思慮深い、主人公のターニングポイントになる女性の胸が巨乳だって素敵だし、魔性の女だからって貧乳でもいいと思うよ。睦っちゃんの胸はよく食べる健康の証。

 

ああでも、ひとつだけ意外ではなかったこともあったな。

睦っちゃんも嘲風さんも、浪さんを肯定する役、という部分。母上は勿論、自分の子供の声はマジ最高と思いながら子育てしていたわけだし、聆牙はお前は何も悪くない、と言った。店主は浪さんのおかげで店が繁盛し、狂狷さんも結果的に浪さんのおかげで出世できたので、浪さんを認めてるはず。

たったひとり。太歳さんだけが、過去に、力に、流されるなと否定する役だった。否定した上で、利用される者の辛さ悔しさを理解しようとしていた。

浪さんにとってはあの世界でただひとり、役割の違う特別な男だったんだ、太歳さんは。白、白、白、白、と同じ波長の声色をつきつけられて。太歳さんから聞こえた声の色はきっと、赤。受け止めて、生きて行かなければならない罪の色の赤だ。

だから、赤く染まって覚悟を決めた浪さんを、一振りの魔劍を、太歳さんは懐に受け入れた。どんな魔剣も、全て俺のものだ。そういえばどこかでそう言っていたな。

そこですとんと恋に落ちて殤浪におさまったところは、意外じゃなかった部分。