殤浪@サンファンドットコム

【Attention!】こちらはBL要素・18禁の内容を含みます。どうぞご注意下さい。Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 のキャラクターのカップリング推しの管理人、律による、腐向け二次創作記事中心のブログとなってます。

乾燥注意報

毎日乾燥し過ぎてはいないか、関東圏。寒くてエアコンをかけっぱなしなのも一因だけれど、やっぱり冬の湿度は低すぎて、朝起きると声ががらがらになる。これが現パロのアーティストの浪さんだったら、きっと毎日加湿器をつけた部屋で過ごして、はちみつ入った飴を舐めて、マスク生活を送るところだろう。でもそうすると、麗しの顔が見られなくて、殤さんは寂しい思いをするかもしれない。雑なエロ妄想が思い浮かんだので記載。

 

 

「兄さん、こっちへ来てないって? 」

兄とは髪と瞳の色以外似ていないが、声はそっくりの若い弟が、殤の店の奥にある居間のこたつでみかんを剥きながら問うた。

「ああ、忙しいんだろうがな。」

年下の恋人は多忙なのか、正月休みを殤の懐で過ごした後は、大寒を越える今も顔を出さなかった。代わりのように、恋人の弟であり、殤の弟の恋人である白ふよが果物を土産にして遊びに来る。なんでも冬こそビタミン摂取が必要なのだそうだ。

白ふよは指でみかんの白い筋を弄びながら、古い和室の居間の天井をぐるりと眺めて、ひとつ頷いた。

「忙しいってほどじゃない。うちには居るし。」

冷めた日本茶を取り換えてやろうと湯呑に伸ばした殤の手が、ぎくりと止まる。多忙によらず、恋人の足が遠のく原因は、海を漂う泡のように数多く思い当たりもするし、はかなく打ち消されたりもする。殤の顔色を見て、白ふよは慌てて言った。

「違うよ。殤兄さんと会いたくなくて来ないんじゃない。浮気してないか、様子見て来いって言われてるし。」

浪が顔を出さなくなったのと交替のように、白ふよは大学やバイトの帰りにひとりで、また弟の太歳と連れ立ってやってきては、居間で短い時間を過ごして自宅へ戻るようになった。安堵しつつも、殤の疑念は晴れない。

「お前、近頃しょっちゅう遊びに来るのはそれか。じゃ、なんであいつは来ない? 」

白ふよはみかんの筋のついた指で、天井の隅を指した。

「ここ、天井から乾いた隙間風入ってくる。なのに、加湿器置いてない。」

「あああ~。」

自分の至らなさに歯噛みする思いで、殤は低く呻いた。彼の可愛い小鳥は類まれな歌唱力を持つシンガーでもある。歌い手の喉に乾燥は厳禁だが、骨董にはまた加湿もよろしくないため、殤は店舗にも続きの住居スペースにも加湿器は置いていなかったのだ。

浪の訪れがないのを寂しく感じながらも、その理由と心中まで慮ってやれなかった。こうして弟に土産を持たせてまめに寄こすほどであるから、心配していたのは浮気だけではなかったろう。

「たまには、殤兄さん、うちへ来て。」

俺は太歳の部屋にいるから。本日の滞在任務は終わりといわんばかりにそれだけ言うと、白ふよは床へ置いたままの上着を羽織った。基本的に出不精であるこの店の主が出歩くのは珍しく、だから兄は、素直に会いたいとねだれなかったのだ。

真っ白なダウンに袖を通すのを手伝いながら、殤は即決していた。

「今夜行く。」

 

 

温室か、亜熱帯の夏か、と勘違いしそうな湿気が肌を打ち、吸い込む肺を重たくする。いつ持って帰ったものか、正月に殤の店の居間で羽織っていた褞袍を着込み、久しぶりに会う恋人はリビングの長いソファの上で横向きに膝を抱え、丸くなっていた。部屋の隅では白い箱型の加湿器がせっせと稼働して、温室の空気を作り上げている。

久しぶりに見られた浪の顔の半分以上は大きな白いマスクで覆われ、綺麗な目がふたつ、壁の上からのぞいているのみだった。その瞳が殤の姿を捉えると、揺らいで潤んだ。

「……来てくれたのか。」

「たまにはいいだろ。」

手を伸ばして来るのに応えて、同じソファに隣掛けて座る。会うなりぎゅっとしがみついてくるのは、普段は殤の店で補給と称して浪がやっているお馴染みの挨拶だった。それを真似て、今度は殤が、会えなかった分を埋めるように腕に抱きこんだ。

「あー、お前が染み込んでくる。すっげぇ染みる。補給ってこういう感覚なんだな。」

「……少しは気持ちがわかったか。」

いつもとは違う恋人の様子に戸惑いながらも、浪はくすり、と笑って言った。

会いたくて会いたくて、でも時間の都合がつかずに会えなくて。我慢した末にいざ肌が触れ合うと、全身の細胞が殤に向かう。体温を感じ匂いを吸い込んで、雨季に水を貯える乾いた土のように貪欲に五感を働かせて、やっと満たされるその感覚。

「なんか、虫で、ほら、相手の中身を溶かして、空っぽになるまで吸っちまうようなのいなかったっけか? お前がいなくなるのは困るが、全部吸って胸に納めちまいたいくらいだ。」

抱き合う雰囲気もぶち壊しな、スプラッタな例を挙げるのにはムードがないが、殤の言いたいことは浪にも覚えがあった。

「俺も。」

互いの希望を阻むのは、浪の顔半分を覆うマスク。恨めし気につつきながらも、殤は無理にそれを外したりはしない。浪の喉を守ってくれる、大切な防御機構だからだ。

「この部屋なら、いい。」

自ら顎の下にマスクを下げた浪の唇は、正月の時よりもしっとりと光っていた。あらためて、住環境の大事さを思い知りつつ、許された唇に指を這わせてからそっと己のそれを合わせた。いつもなら荒々しく噛みつくところを、理性を総動員して優しくはむ。ゆっくり、とろとろととろ火で煮詰めるように、唇のみを触れ合わせて呼吸と温度を分け合っていく。激しさを求めない代わりに殤は時間をかけた。温室の中、ぬるま湯にふたりで浸かるような感覚が心地良い。

顔を赤らめ、息を弾ませて浪が呼吸の合間に問う。

「な、んで、……こんな、ゆっくり、」

「たまにはいいだろ。」

会いたいのを我慢してまで、浪がプロ意識で乾きから守ろうとした喉であり、唇である。殤もまた、その意気を台無しにしたくはなかった。

口づけを互いに深め合いながらも、焦らずに、折り重なった欲の花びらを丁寧に一枚ずつ剥いでゆく。リビングで一糸まとわぬ姿になる勇気はなく、殤は前開きの白のシャツを羽織ったまま、インナー代わりの紺のTシャツの下で慄く浪の乳首を愛撫していた。それも、痛みを与えぬよう慎重な指遣いで触れる。胸から脳天まで、柔らかくひたひたと押し寄せる快感に、押し倒されたソファの上で浪は身をよじって悶えた。

「…、ぁ、は、」

いつもの睦事よりも浪の声は出ていない。その代わりに呼吸が早く、汗を倍以上かいていた。きつさを訴える浪のチノパンと下着を取り去ると、白い太ももまでがしっとりと汗ばんで濡れている。

「いつもより大きくなってないか? 」

現われたそれは時間をかけた体への愛撫だけで充血しきっていて、先端が既にびしょびしょになっているのを、殤は可愛いと目を細める。

「いっぱい、水をやってもらえたから、ぁ、んぅ、」

喘ぐ喉にまとわりつく湿気も、不快である筈の汗のべたつきさえ、与えられる手が殤のものであるなら甘露を浴びて吸うのに等しい。

気がつけば熾火であぶり続けて辿り着いた快感の先は、性急に、鋭角に高め合ったそれより到達点が深く、浪がとうとう耐えきれずに懇願した。

「殤、もう……、」

「たまには、いいだろ。」

 

幾度目かの同じセリフで浪に与えられたのは、いつ終わるともしれない長時間の、指でのナカへの愛撫だった。傷つけないようにしないとな、といた与えられた丹念な慣らしは、お前は仙人かと浪がつっこみたくなるほどにゆるゆるとしていて、それでいて小舟が壊れぬほどの波の絶頂を八度も九度も繰り返し促すので、しまいには時間の感覚がなくなっていた。意識も遠のき、泣いているのか笑っているのか、何を口走っているのかもわからなくなる。

「入れて…、もう、いれてぇ…っ、」

「そんなに叫ぶな。喉を傷めるぞ。」

誰かの、引きつった泣き声。浪がそれを自分のものだと気づいた時には、上半身が浮遊して、ほどけきったそこへ熱い固まりが押し込められていた。

 

膝の上で、揺りかごであやされる赤ん坊のようにゆすられ、振動で体の中身がぐずぐずに溶け出してしまいそうだった。

「とける、殤、体、とけちゃう……っ、」

「そのまんまとろけちまっていいぜ。残さず吸ってやるから。」

「んん、うん、ん、ああああっ、」

部屋の高い湿度は息苦しさと、酸欠と脱水で眩暈を引き起こす。弾ける寸前で炙られ続けてきた体は耐えられる快楽の限界にあり、大きな喘ぎとともにそれまで小さかった嬌声が、ダムが決壊して水が溢れたかのような大音量で部屋を満たした。座位の自重で奥を突かれるたび狂ったように叫ぶ浪に、一度は下げたマスクを器用につけ直し、自分の肩に浪の顔を押し付けて声を阻む。

「こーら。喉は大事にしねぇと、駄目だろうが。」

「んーーーーーっ、」

ぐいと頭をおしつけられた衝撃で入っている角度が変わり、えぐられた場所から強烈な悦楽が突き上げる。いっぱいに空気を入れられたゴム風船が、抑える手を放されてぶるうると震えながら縮むように、浪の体は激しく痙攣しながら溜め込まれた欲を吐き出して、がくりと力を失った。入り口の締め付けの強さに、殤も久方ぶりの放出を味わう。

涙を滲ませてぐったりと目を閉じる顔は、マスク越しでも隠せないほど艶めいている。息を整え、未だに小刻みな痙攣の続く浪の内部を堪能しながら、殤は呟いた。

「マスクしたまんまでも別嬪さんだな。やべ、おかしな性癖に目覚めそうだ。」

互いを堪能して潤った心は、当分冬の乾燥にさらされたとて乾きそうになかった。