殤浪@サンファンドットコム

【Attention!】こちらはBL要素・18禁の内容を含みます。どうぞご注意下さい。Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 のキャラクターのカップリング推しの管理人、律による、腐向け二次創作記事中心のブログとなってます。

嫁が君

台湾の東離のFacebook、久方ぶりの赤浪さんがお美しい。春節旧正月ということで、中華圏のお正月が25日に来たらしい。去年の霹靂さんのTwitterでも赤い背景をバックにした浪さんの画像が掲載されていたけど、やっぱり浪さんのまとう色はおめでたい、とか縁起が良いとか、そういうイメージなんだな。

書いてあった金鼠の意味がわからなくて調べたら、子年の中の星回りのようなもので、そういうものがどうやらあるらしい。現代日本だと十二支しか使用していない干支は、あちらでは十干(甲乙丙丁戊己庚辛壬癸)+十二支(子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥)になるようで、今年の庚子年は干支の組み合わせで、庚が五行で云う陽の金で、子が鼠とのこと。いつもながら五行は難しくてさっぱりわからない。世界史やってたらたしかに、壬申の乱だの辛亥革命だのとでてきた覚えはあるけれど。(甲子園は甲子年に建設されたから甲子園らしい。)要は、いつもの子年より幸せないいことがある年なのかな。

 

心有所鼠、も翻訳してもわかりにくいけど、誰かを鼠になぞらえて、意中の鼠がいます、とでもいうのだろうか。浪さんの意中のひとなんて、言わなくてもみんな知ってますよ。こういうのをさらっと新年の挨拶に混ぜてくるあたり、本当に霹靂さんは、ファンをわかっててくれている。心を捉えるのがうまいというか、絶妙としかいいようがない。

ところで日本では、正月三が日の忌み言葉として、鼠を「嫁が君」と言い換える地方の風習がある。子(ね)という音が寝(ね)につながるのを嫌がったとかなんとか。それを考えると、浪さんにとっての「鼠」→「嫁が君」は殤さんということになり、あの一文は「もうお嫁さんがいますよ」という解釈になり。おっとこれは浪殤案件なのだった。わたしはCP逆でもあのふたりが幸せでいてくれさえすればいい人間なので、これもまた霹靂さんに感謝なのだった。

 

 

わかりやすい子供だわ、と睦天命は内心でため息をついた。

酒楼で青春時代を送ったとは思えないほど、純粋、純朴なのである。もともとうつむきがちで人と視線を合わせない、かの奇怪な琵琶の語ったとおり、恥ずかしがりだとは思っていたが。最近では睦や天工詭匠らとはしっかりと顔を合わせ、言葉数は少ないものの話はする。それが。

「おい浪。そっちの皿とってくれ。」

「……。」

「この先の街道だが、どうだ。追手はいそうか? 」

「……、」

「馬車は仰山いるけどよォ、幸い騎馬はいないってよ。」

「隊商ってところか。ありがとうな。」

「……っ、」

 

ほとんどまともに顔を合わせて口を聞いてもらえないのが、殤不患だった。初対面で脅すようなことを言うから怖がられたのでは、と思っていた天命だったが、観察するうちに、どうも違うらしいと気づいた。当の殤は、やはり怖がらせたのではと気に病んでいるものの、できるだけ普通に接しようとしているらしい。話しかけたり、触れられたりするのを、浪が一方的に意識し過ぎるのだ。

「ねえ、巫謠。貴方、どうして不患とは目を合わせて話さないの? 」

彼が、怖い?

二人きりになったのを見計らって直截に切り出すと、浪は目を見開いて、首を振った。

「怖くはない。ただ、」

「ただ? 」

優しく促してやれば、口ごもりながらも自分の言葉で喋ろうとする。

「綺麗で、胸が痛い。」

「なにが、綺麗なの? 」

わかっているが、辛抱強く問う。そうして言葉にして無意識下に眠っているものを意識の遡上に引き出さなければ、この無垢な子供にはわからない。

「瞳や、声が。」

「ええ。」

「見るたび、聞くたび、せつない。」

「そうなのね。」

「殤が、困っていると、つらい。」

「そうね。」

「怪我をすると、痛い。」

「次はさせたくないって、思うわね。」

「ああ。」

「不患のしてること、間違ってる? 」

「殤は正しい。俺は信じる。」

「そう、それじゃ……、」

 

なおも続けられる短い問答の間、背中の琵琶はきっと、喋りたくて仕方がないだろうに、沈黙を守っていた。これは、人の心の柔らかい領域だと、賢明なる器物はきっと悟っている。

「ねえ、巫謠。天工詭匠のこと、好き? 」

「ああ。俺の知らない、いろんな世界の物事を教えてくれる。」

「私のことは? 」

「睦姐姐も、好きだ。演奏が上手だし、優しい。」

「じゃ、不患のことは? 」

「……っ! 」

しばらく沈黙していた浪巫謠の眼から、不意に涙が滑り落ちた。拭うこともせずに呆然としている。

それが、人を本当に好きになるということよ、巫謠。その人の一挙手一投足を思うだけで、言葉の、想いのひとつひとつに触れるだけで、苦しくてたまらなくなるような。

後から後から、地に落ちていくそれを見守りながら、最初から知っていた答え合わせをするように、天命は微笑んだ。

「あなたには、……好きなひとがいるのね。」