殤浪@サンファンドットコム

【Attention!】こちらはBL要素・18禁の内容を含みます。どうぞご注意下さい。Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 のキャラクターのカップリング推しの管理人、律による、腐向け二次創作記事中心のブログとなってます。

だんなさまの音 弐

またある日のことだった。

ただいま、と帰って来た旦那様の足音が、いつもより重い。と、と、と、ぐらいのリズムの足音が、どた、どた、どた、と聞こえる。

浪の前では仕事で疲れた顔を見せない旦那様だけれども、ああ、お疲れなんだな、とすぐにわかる。

外回りで大汗をかいたから、と食事の前に風呂に向かった隙に、浪はまた彼のバイブルを開く。今夜の夕食は豚の生姜焼きとサラダに決めてしまっているから、足せるとしたらあと一品ほどだ。

ビタミンBは幸いなことに、豚肉でとれる。あとは。

鉄分が不足すると疲れやすい。鉄分はひじきや大豆。よし。

ちょうど、作ったばかりの常備菜の、ひじきと大豆の煮物があった。味はまだじっくり豆にしみこんでいないけれど、出してしまおう。

浪はそう決めて、ぱたりと本を閉じる。それから本を棚に隠して、ふたりぶんの遅めの夕食の用意をする。

ごはんとすまし汁、生姜焼きに、大皿に盛った大根と貝柱のサラダ。プラスでひじきと大豆の煮物を小鉢に盛る。

手早くあれこれ用意していれば、風呂上がりのいい香りをさせた旦那様がダイニングスペースにやってくる。

案の定、作り立てでどこか味の浅い、甘めのひじきと大豆の小鉢は進まないらしく、生姜焼きでライス完食後も残ってしまっていた。

けれど、ひとが作った食事を理由もなく残すような旦那様ではない。最後にがーっとかきこんで、平らげてくれた。それから殤が食器を洗おうとする手を押しとどめて、まだちょっと濡れているおくれ毛を乾かすように言いつけて、キッチンに残った。

 

ひじきの黒いかけらが残っている小鉢を、泡だったスポンジで洗いながら、浪は祈る。旦那様の血となり体を駆け巡って、疲れをとってくれるようにと。