レーコンキスタ

実は、予告を見て、東離六話が永遠に来なければいいのにとさえ考えていた先週。睦っちゃんが失明するなんてたとえそれが天命であったとしても悲し過ぎる、と思って。

冒頭の禍世螟蝗戦から、殤さんがなぜ浪さんを遠ざけ、睦っちゃんと逢わない選択をしたかがドラマティックに語られており、そういう人間らしい苦悩を隠さない殤さんだからこそ、浪さんは惚れ込んで命を落とす覚悟もしたんだろうと、すごく良いシーンだったのだけれど。

……いかんせん、短い。

いやここは、三十分ぐらい尺を取ってじっくりやって欲しいところだった。捲ちゃーん、声をかけるのがちょっと早すぎるよ。尺の都合で仕方がないとはいえ、悲嘆の余韻というものをね、もっとね。殤さんも、あっさり元に戻り過ぎる。

こういう、尺のなさとそれに伴う掘り下げの浅さが勿体ない、と思わせる箇所が随所にある東離。そこは各自二次で補完してください、ってことなのか。

盲目のキャラ、といえば、大好きなサンホラにもあちこちに散見するのだけど。ざっと思いつくだけでも、澪音の世界の澪音、辿りつく詩のルーナ、星屑の革紐のエトワール、Moiraのミーシャ、イドのメル、等々。

浪さんのお母さんも後天的に（盲いたわたしに、と言ってるので）盲目になってるところで、非常にサンホラ感を感じていたわけですが、まさか睦っちゃんまで、と。

しかも次回予告で出て来た方が、聖戦のイベリアのあの御方をまさしく彷彿とさせる容姿で。これはサンホラ民へのサービスなのか。（そんなわけはない。）これで黒い羽つきとかだったら流石にシャイたんみ溢れ過ぎて抗議案件。明夫さん繋がりで声優が飛田さんとかだったら鳥肌もの。

OP映像が公開された時、大魔神みたいなのの手の平に乗ってる浪さんを見て、不思議と「おじいちゃんと孫」を妄想していた。

で、今回、禍世螟蝗から逃れた手段が、雷撃。予告に出た魔族の容姿の類似性。無関係だろうけどどうしても浮かんでくる石畳の緋き悪魔。

雷ってWoDの冒頭で素素様がうたれて死んじゃったけど、神の天罰の意味合いもあるようで。異文化の最高神が、他文化においては堕天使とされたり悪魔とされたりする事例もよく聞く話で。人間界からは魔王と呼ばれる魔族のトップが、元々は創造神レベルの格の高い神であったとしても不思議はなく、そんな神の血をひいたとしたなら、どんな孫になるのか。

人間の女性に恋をして、堕天した天使がいるように。西幽の貴族の娘に恋をして、魔界で幽閉された魔王の息子、がいてもおかしくない。貴族の娘はやがてひとりの男の子を授かるけれど、父方の親族の介入を恐れていて、魔族に対抗でき得る唯一の権力者たる帝の庇護を望んだ。魔族の血をひくとも、人間の魂をもって人間らしく生きて欲しいと、己の力の源を剣とし、その柄を握る術を教えて世を去った。

他の魔族の手前、息子を幽閉したものの、ひそかに孫を見守っていたおじいちゃん。浪さんが本気で誰かを誅したいと願った時にだけ、血脈の中に受け継がれた魔力が発動し、増幅される。

「おー、ふよが怒っておる。じいじが手を貸してやらねば。」

しかしそれはあまりに巨大な神力であるため、人間界に及ぼす影響は大き過ぎて多用はできない。また、半分は人である浪さんの身をも苛み滅ぼしてしまうので、聆牙は焦って止めている。

そうなるとふよママが言ってた、歌を届けなさい、の対象となる神々というのはどっちなんだろうな。帝が祭祀を司り託宣に従う、萬輿国伝統の神なのか。異国の、義父に連なる魔神達なのか。宗教団体トップの禍世螟蝗が崇めている神も、まだ誰だかわからないし。神々とか大嘗とか、信仰を仄めかす単語が飛び交う割には、肝心のこの世界の宗教観が明らかになっていないんだよね。設定資料集はよ。

崖の上で一生懸命歌う幼巫謠を見て、「ふよはお歌が上手だなぁ、じいじちゃんと聞いてるぞ。」と相好を崩す魔王も捨てがたい。

ベルたんは魔王の外孫とかで、ふよ従兄弟で、「じーちゃんまぁた人間界のチビ覗いてるよ。」と呆れていてもおいしい。

生い立ちに不幸な業を背負わされた浪さんが、さらにハーフの、どちらの世界にも居場所がない苦悩を負わされているとするならば。同じように避けられない因果を負う殤さんに惹かれるのも道理だし、そんな殤さんが浪さんを放っておけない、どんな形であれ守りたいと思うのもまた自然。放っておけないからこそ「家族」であるし、放っておける存在というのは「他人」だから。西幽玹歌で大暴れしたり、鳳曦宮で浪さんを守る為に官憲の首をバッサリ斬った殤さんの姿は、案外この人、博愛主義とみせてそうでもないな、差が激しいなと思わされたんだった。