殤浪@サンファンドットコム

【Attention!】こちらはBL要素・18禁の内容を含みます。どうぞご注意下さい。Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 のキャラクターのカップリング推しの管理人、律による、腐向け二次創作記事中心のブログとなってます。

冬来たりなば春遠からじ

とうとう十三話を数えて終わってしまった東離三期。予想していた部分が当たったり、残念ながら願いが叶わなかったり、答え合わせをするみたいな感覚で視聴。

明夫さんはビョンホンと違い、きちんと自分の信念に沿った形で殉ずることが出来たので、そこは良かった。猊下の正体は驚いたけれど、どうも腑に落ちない。一国の皇帝で、出来ない事はなにもないキングそのもののはずが、どうしてキングメーカーみたいな真似をしたがるんだろう。西幽皇室は、魔王や天界と、なにか破れない血の約定でも交わしているのか。だから野望を叶える為には違う素体が必要であるのか。

復活してくれるといいなと思っていた異飄渺は帰って来なかった。魂は千里を駆けるというから、軍破殿は是非、無界閣で彷徨っている蟷螂の魂を迎えに行ってあげて欲しい。それにしても神蝗盟の幹部でも、教祖の正体は知らされてないんだな。死者は時間空間を越えて全てを見通す法則にのっとって、蠍っちゃんと三人、正体を知った猊下に祟っていただきたいもの。異飄渺の終わり方はやっぱり、一期二期三期を通じて最も不憫だった。何が不憫って、四期もまたその名と容姿とを白い悪魔に再利用される可能性があるということ。これぞ死体蹴りもいいところ。

 

なんだかあれだけ無辜の民を殺戮した婁震戒ひとりがハピエンに終わるのも、どうも釈然としない。媛はまぁ自業自得で、きっと大勢が予想した通りの終焉であったにせよ、婁さんだけどうにも贔屓が入っている。本物の巨悪というのは本人にその自覚がないのが特徴だと思っていて、この物語は作者が巨悪に優しいのがどうにももどかしい。それでいて、中途半端でやり直しがきく悪にはやたら手厳しい。理不尽。

 

十三話ポスターで涙を浮かべている浪さんは、何かを決意した眼差しで。開いた門から魔界に乗り込もうとしているのだろうと十三話を見る前から分かってしまった。そこはヒロイックファンタジーの、お約束のような展開であるし。ただ、行くならばひとりではなく殤さんも一緒に行って欲しいと願っていた。ひとりで行く浪さんと、必死に引き留めようと叫ぶ殤さん。己の名を呼ぶ必死な声を聞きながら、断腸の思いで歩を進める浪さんの胸中たるや。愛する者を置き去りにしても、果たしたい使命がある。乗り越えるべき宿命がある。それは二期でひとり鬼歿之地を越えた殤さんの姿そのままで、どこまでいっても不器用で、似た者夫婦な殤浪さん達なのだった。

殤さんは今度は、置き去りにされた側の辛さを噛み締めるといいし、浪さんは置いて行く辛さを知って、殤さんの心をより深く理解すればいい。

ああでも、間奏はそこは「Roll The Dice」じゃなくて「Crescent Cutlass」が良かった。ママンの想いも背負って行くんだからさ。そして、ひとり遠ざかり瓦礫の中を行く浪さんの画が、あと十秒ぐらい長かったらなお良かった。尺の関係で仕方がないけれど、三期に足りないのはひとえに演出家であると思う。大仰な動きの多い人形劇だから、テレビアニメの演出家じゃなくて舞台芸術の演出家がいい。

 

「すまない、」

愛する者に置いて行かれる苦悩を、誰よりもその身で知る浪さんは謝罪する。叶うならばこれからもずっと共にいたい。けれど半身に流れる血の宿命と、知ってしまった母の無念がそれを許さない。時を操る強力な魔界伯爵を倒せる可能性は低く、されど差し違える覚悟を持って父の元へ向かう。想い人の声を背中で聞きながら。

長の別れになろうとも。これが今生の別れとなろうとも。

いつもあなたを想っている。俺を呼ぶあなたの最後の声を、耳の奥に焼きつけて忘れないでいる。俺の名を呼ぶあなたの、愛おしい声を。

 

せつなくて重く心を打つ殤浪の恋を、しんどくて辛い運命に翻弄される霹靂の恋人達を、十三話、最後の最後で提供して終わる展開が公式。余計な言葉などなくとも、殤さんの魂の叫びが全てを物語っている。そして、そこでフェードアウトして流れる「judgement」。浪→殤さんへの恋の歌。

 

沼底の民にはたまらない終わり方でした。らぶ甘な殤浪ちゃんも勿論好きなんだけど、両片想いや、離れていても思いが募る遠距離恋愛や、宿命に引き裂かれる悲恋もまた大の好物であり。うっかり阿修羅城エンドにでもなったらまた妄想がとまらない。ちょっと待って、美味しすぎやしないだろうか。心をむき出しにしてぶつけ合って、叫び合って、離別の辛さに互いに涙して。公式でそんな殤浪ちゃんが見られた三期は、二期以上に妄想を産む源泉で。物理的な距離が生まれた事など全く苦にもならない。むしろ互いの心はお互いの行動をなぞって理解し合うことで、よりいっそう近くなったのでは。

ともかく沼底で生まれた小石を地上にばら撒くことから始めなければ。ああ時間が欲しい。

 

越えるべき冬を、凍てつく寒さを幾度も二人で乗り越えた先に、春が来て花は咲く。寒さが厳しければ厳しいほど咲く花の色は美しく、香り高く、もたらされる笑みはより一層、互いの心を幸福で暖めるものになる。大事なのは信じ続ける心で、大勢の人間が夢を見たそれはいつか本物になると信じる。花よ、咲け。