またあーした
普段はサンホラやHR/HM系の楽曲メインで聞いているので、本当に久しぶりにいわゆる日本生まれのラブソングを聞いている。JUJUさんの、また明日。これも殤浪ソングに聞こえるようになってしまった。せつない。どんなに遠く離れても、愛し続けて、そして無事に再会の日を迎えて欲しいもの。
公式からは三期終了間際から、グラッテやグッズと怒涛のような新商品展開。指人形に、18cmぬい、かぁ。勿論買うのなら殤浪セットでお迎えしたいけど、置く場所どうしよう。
三期ビジュアルブックはビョンホンや軍破殿も載っているだろうしマストバイとして、ぬいはちょっと迷う。まだ監修中でお顔が出ていないのもあるけれど、完成品になったら欲しくなるだろうか。
それにしても無生さんがぬいになるのがすごく嬉しい。無生さんはファンの方々がグッズを切望しているのを何年も見てきたので、声が届いて良かったなと思う。凜殺推しの方々も二体並べられるし。推しが並んでるの、やっぱり格別。
並んでいるといえば東離公式Facebookの三期終了記念イラストが、嬉しい並びばかりだった。殤さんと浪さんが並んでる(涙)。凜さんと無生さんも並んでる。そして神蝗盟お弁当組! 異萬も萬異も異蠍も好きだから、三人でわちゃっとしてる雰囲気がすごく良かった。三期、絶対どこかのタイミングで蠍っちゃんのお墓参り行ってるよね。二人でお骨をお迎えに行ってくれたと信じてる。公式さん最後に素敵な画をありがとうございました。殤浪/浪殤どちらでも嬉しい。この画の複製、額に入れて飾れたらなぁ。
グラッテは色々考えて、やっぱり今はまだ遠出できる状況じゃないと諦めることに。各種グッズはこんな時代だから通販のお慈悲が欲しい。ランダムものばかりだから無理だろうか。やっぱり時期が悪いとしか。
でもきっとグラッテとかドリンク系が一番儲けがでるんだろうな。ビジュアルブックやぬいでは、あんまり売り上げに貢献できそうにない。せめてもの、妄想駄文を綴って殤浪好きさんへ貢献。
「あなたのいろ」という素敵なお題があったので勝手に拝借、本当にすみません。
◇◇◇◇◇
「お前のいろ、だ。」
安宿の扉を開けてすぐの、狭い寝台の上で。黒い薄衣を頭からかぶった全裸の浪巫謠が、珍しくもどこか得意そうな顔でそう告げて来て、殤不患は絶句する。
旅の途中の町、研究材料を買い込むという天工詭匠と、護衛を買って出た睦天命と別れた二人は、落ち合うまでの数日を、市の側にある商人用の宿に逗留して過ごしていた。寝台の他には何もない、本当に素泊まりだけの宿であるため、市にある屋台が食堂代わりである。夕食用に焼餅を買い込み、待っている浪の元へと帰ってきたらこの媚態だった。一瞬、空腹が過ぎて目がおかしくなったかと思ったほどである。
「あー……、不患ちゃん。これにはそれこそ色々なワケがあってなぁ。」
寝台脇の壁に立て掛けられた聆牙が、気の毒そうに苦笑した。
昼までは、殤と浪とは共に買い物をしていた。市の一角で別れた後、近くにいた野菜売りの禿頭にからかわれたのが始まりだったと、琵琶はのたまう。
(「ねぇちゃん別嬪だねぇ。さっきの黒服の野郎は、ねぇちゃんのイロかい? )」)
(「……いろ? 」)
色とはなんだろうか、と浪巫謠は考えた。隠語の飛び交う酒楼で生活しながら、店主のはからいにより可能な限りそれらから遠ざけられて成長した浪である。いろ=情人であるとは思いもよらず、赤や黄色、青のどこが殤なのだろうと本気で首を捻っている。
(「おい、構わず行こうぜ、浪。」)
琵琶が促すも、たいして売れずに暇だったのだろう、尚もぺらぺらと男の舌は回った。
(「はーん。イロじゃねぇんなら、ねぇちゃんの岡惚れかい? 」)
また聞きなれない単語が飛んできて、美しい眉がひそめられる。
(「おかぼれ? 」)
おかぼれってなんだ。どこかの丘を掘り返すことか。それは目録の中にある萬世神伏であれば造作もないだろうが。いくら殤でもその辺の丘は安易に破壊するまい。
つらつら考えるうちに真顔で無言になった浪を、からかって恥じらう顔を見たかった筈の店主は拍子抜けと思ったのか、呼び止めておきながら行った行った、と手の甲で払った。
(「なんだいアイツ。イケ好かねぇ野菜売りだな。」)
ぷりぷりする聆牙の首をひと撫でし、浪は己のまとう紅の衣装を見下ろした。
(「確かに俺は、殤の色ではないな。」)
白髪交じりの長い黒髪と、黒づくめの衣装。外套こそ白だが、ぱっと見の殤の色は黒である。衣装も、橙の夕陽に染まった己の髪も、まるで闇の色合いにはほど遠い。
(「あのねェ浪ちゃん、イロってぇのはよ。ってオイ、聞けよ! 」)
人の話も琵琶の話も聞かないと定評のある浪である。とある店先に並んだ黒い布を目に止めると、目を輝かせて買い込んだ。
(「これで、殤の色になれる。」)
「なるほどな。悪ふざけじゃねぇってのは、よーくわかった。」
「ふざけてなど。」
長い絹を被り、夕陽色の髪を隠した浪の体色はまさしく黒と、抜けるような肌色の白。確かに殤の色になっている。額を押さえつつ、殤はしかし口元をぐにゅぐにゅと歪めた。可愛いが過ぎて、頭の中で激しく渦を巻いて、唇に力を入れて押さえつけなければ叫び出しそうだった。
「お前のいろ、ねぇ。イロなら、とっくになってるだろうに。」
浪巫謠が、頼りになる相棒から、情けを惜しみなく注いで余りある恋人、情人になり代わったのは、一年以上も前の話である。
「だから、今お前の色になったと……、」
緋色の唇を尖らせて言い募る姿に、殤の理性が陥落した。なんだつまりこの男は、自分が殤の色じゃないと言われて、よくわからないままに悔しくなって、俺の色に染まって得意になっていたというのか。
「っとに。可愛すぎだろうが! 」
「不患?! 」
寝台に上がりこみ、猫が鼠を抑え込むように背後をとった。ひざまずいた裸体を背中から己の黒で抱き込む。耳たぶをかりりと噛み、過敏な耳にふっと息を吹き込めば、浪は体を震わせて喘いだ。低く甘い声が注がれ、慣らされた体はしっとりと熱を帯びた。
「ひとつ教えてやるよ。色って字はな。人がひざまずいた相手の背後に乗っかって、淫らに腰を振ってる意味なんだとよ。」
ちょうど、こんな風に。と、兆した己の屹立を尻の狭間にぐいぐいと押し付けてやる。
「はぁ、ん、え、え? 色、って……? 」
幼少期から五感を鍛えられ続けた浪は、着火が早く、快楽に人一倍弱い。疑問の声を上げながらも、既に狭まった視界が潤み、翡翠が溶けだしそうになっている。
「つまりは色っぽい仲だってことさ。教えてやらなかったのか、聆牙。」
「どーせ旦那が帰って来たら、手取り足取りおっぱじめるんだろうと思ったのよ。」
ため息をついた琵琶は、何も見ない聞かない喋らないモードに入る。純粋が過ぎて少々天然な主も主なら、あてられてその気になるその伴侶も伴侶である。つまりはとっくに。
「ああんっ! 」
「お前の色さ。俺もな。」
長い黒髪と、黒絹とにまみれて汗ばんだ裸体がしなる。橙色の三つ編みが殤の腰にからみつく。狂おしくも正しく、互いの色に染まった恋人達の夜は、互いの色を体の奥深くまで打ち込んで教え、刻み付け合う宴は、始まったばかりだった。
東離に来て早々巻き込まれた事件が終わり、殤不患は丹翡の心づくしである紹介状を携え、仙鎮城を目指していた。
晴れて日差しの差し込む街道の脇には、百合に似てそれより小ぶりな、濃い橙色の野萱草(ノカンゾウ)の花が群体で咲いていた。陽の光を吸って鮮やかなそれは、まるで置いて来たかの恋人の髪を思わせて。躊躇いの後に一輪だけ手折った。
ほんの戯れだった。己の黒髪に沿わせ、くるくると花を巻き付ける。
「……お前の、色だ。」
呟いて、目を伏せた。
どんなに遠く離れていても、心の内に燃える愛の熾火は、かの男の色。
(「おれ、は、……お前のいろ、なのだ、な。」)
息も絶え絶えになりながら、うっとりと呟いて気を失った横顔の愛おしさを、今は遥か遠くにあるそれを、黒髪に咲く花が映し出す。
「そうだ。お前の、モンだ。」
柄じゃぁねぇんだが、仕方がねぇ。手が、首が、勝手に動いちまうのが悪い。
締まらない言い訳を繰り返し、殤不患は、そっと持ち上げた愛おしい花の色に口づけた。