殤浪@サンファンドットコム

【Attention!】こちらはBL要素・18禁の内容を含みます。どうぞご注意下さい。Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 のキャラクターのカップリング推しの管理人、律による、腐向け二次創作記事中心のブログとなってます。

コップ半分のミルク

東離三期の振り返りだったり、あらためていろんな殤浪シーンの確認だったり、放映中にちょっとだけ書いた妄想をもう少ししっかりとした形にしたり、やりたいことは数多くあれど。あれども。

浪さん半分魔族なんだなとつらつら考えていたら、ハーフインキュバスの浪巫謠というヨコシマな妄想が降りてきてしまったよどうしよう。

 

 

会社員である殤不患は、ある晩、たまたまコップで飲んでいたミルクを窓辺に置いたまま眠ってしまう。朝になるとコップは空で、鍵をかけ忘れた窓が少し開いていた。

野良猫でも来たのかと不思議に思い、次の晩はわざとコップに半分ミルクを注いで同じように窓辺に置いておき、気にかけながら寝入った深夜。

窓から入り込み、コップにそろりと手をかけ、こくこくとミルクを飲んでいたのは身の丈20cmほどの生き物だった。幼児が遊ぶ着せ替え人形ほどのそれは、けれど髪はぼさぼさ、服はぼろぼろ、白い頬はこけてやつれ、妖精というよりも幽鬼の子供のような有様だった。

 

「お前がミルク泥棒か? 」

窓辺ににじり寄り、細い襟首をぱっと掴めば、子供は力なくもがきながら殤に謝り始めた。

「ごめんなさい、勝手に飲んでごめんなさい! この対価は、必ずお支払いします! 」

「支払うって、金をか? 」

「……お金は、ありません。」

か細い声で言って項垂れた人型の生き物を、窓辺にそっと降ろしてやった。

「それじゃ、どうやって返すってんだ? 」

「体で、お返しします。」

「んんー? 」

 

妖精なのか小鬼なのかわからないその生き物は、窓辺から滑り降りると、むくむくと大きくなった。しかし大人の背丈まではいかず、せいぜい殤の肩先ほど、十二、三歳に見える丈である。

今や少年の姿となったその生き物は、殤の腰にしがみつき、寝巻代わりのスウェットを両手で引き下ろそうとした。その意図に気づき、慌てて両肩を押さえて止める。

「やめとけやめとけ。いくら対価だろうが、子供のやることじゃねえ。」

「やっぱり、俺みたいな出来損ないじゃ、駄目なんだ。」

絞り出すような声で囁いて、赤毛の少年はするっと小さくなる。気を失って床へ落下しかけた元の生き物を、殤はすんでのところで受け止めた。

「なんなんだ、コイツ。」

人語が喋れて人間の姿にもなれるそれを、さすがに無情に放り出す訳にもいかず、籠編みのバスケットにタオルを敷いた寝床を作り、寝かせてやるのだった。