雷鳴の日にあなたと 三
「すぐに届くかと思いきや、随分と時間がかかったじゃねぇか。」
寝台に張り巡らせるカーテンを持って来たねん殤に、殤殤が毒づく。
「そう言ってやるな。いろいろ資料を探したんだが、既にカーテンがついてる画ってのはたくさんあるんだがな、つける過程やつけ方、ってぇのがさっぱりわからず、ずいぶん試行錯誤していたらしい。」
手をせっせと動かしながら、ねん殤が淡々と説明する。
しかし、そういってとりつけられたカーテン幕はどこか派手であった。
「わかりにくいな。」
「手持ちにカーテンに使えそうな薄い布が、透けてるのしかなかったんだそうだ。しかも入り口側につけると中の様子がいまいちわかりにくくなるので、一度つけてから取っ払ったという。ま、結局自己流だな。」
「デバガメ用かよ。」
なんにせよ、これでまた浪浪の逃げ道をひとつ塞いだ、と殤殤は思う。
◇◇◇◇◇
「いよいよ年貢の納め時だな。」
浪浪を捕まえて来て、条件を満たした殤殤は、どこの捕吏なのかと疑うような台詞を吐いた。
「お前が、俺を大事に思ってくれる気持ちはよくわかった。」
自分のためにあれやこれやと家主を動かし、ねん殤までこき使って準備してくれたのである。戯言でないのは浪浪も承知していた。
「じゃ、いいんだな。」
「ああ。覚悟はできた。」
諦めたように微笑んで、運命を受け入れた浪浪は手を伸ばす。その手をつかんで寝台に引き入れながら、殤殤はからかうように笑った。
「ったく、なんの覚悟だよ。」
横顔が、好きだと思った。きっと一生、好きなのだと。
これを最後の幸せな思い出として、巫謠が来る前に壊してもらおう。